外傷後の脂肪塞栓のリスクは?

四肢の開放骨折

整復術ではなく、整復までの時間が遅いこと

 

ごくごくまれに出会う外傷後の脂肪塞栓。

臨床経験的には三徴が常に揃う訳では無いと思う。

外傷で入院させているとみるみる呼吸不全になって、造影CTをとってもPEは明らかでは無いのに右心負荷所見がある。

診断は臨床診断!

臨床診断だけなので診断は非常に難しいんですよね。診断学よりも画像や検査を重んじるタイプの救命医だった場合には特に(笑)

時に信じてくれない。。。そんなこと言い始めたらパーキンソンとか常に胡散臭いけどね。神経内科医に怒られそう。でも、Syndromeってそう言う感じですよね。

 

 

血液中のFatが捉えられることはほとんどないから、他の所見がないとmicro PEは鑑別になる。

意識障害は結構伴うけど、紫斑はよーくみないとない。ないことも結構ある。

予後が悪い印象があるけど、Under diagnosisかもしれない。経過観察しているとよくなったりもする。

そんな感じ。

 

 

実は機序もはっきりと分かっている訳ではない。

静脈系と動脈系に閉塞性の症状を出す奇妙な(?)脂肪塞栓はMechanical TheoryとBiochemical theoryで説明されているが決着はついてない。

 

 

たまにしか出会わないので、忘れそうになる。そんな背景からこれまでの日本のデータをまとめてみました。

かなり専門的ですが、単純な記述統計は臨床に非常に役に立つので、興味があったら、原著を読んでみてください。

概ね特徴や予後などは臨床感覚と同じ感じ。

UpToDateには開放骨折よりも閉鎖骨折に多いと書かれていて、本当かなって長い間思っていたので、今回それを解決することが出来て、非常に良かったと思います。

 

骨折の整復術も発症に影響しているかもと言われていました。今回の研究では手術よりも外傷そのもの、それから手術までの時間の方に関連がありそうです。

外傷の領域では創外固定などをおいてからの二期手術とEarly Total Careの議論は決着を得ていないけど、この合併症に関しては早くやる方が良さそう。早く出来たから良かったのかもしれないけど。

 

 

前の UpToDate

今回我々の研究で変更ました。臨床に役立つ結果を示し、皆の教科書的な情報のアップデートができたことを嬉しく思います。

大学院生の戒能先生の初めての論文ですね。それがChestと言う。。。ミラクル??

私もなんとなくLast Authorを選択してみました(笑)

 

 

 

原著論文:Kainoh T, Iriyama H, Komori A, Saitoh D, Naito T, Abe T

Risk factors of fat embolism syndrome after trauma: a nested case-control study using a nationwide trauma registry in Japan

Chest, 2020 in press

https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(20)34889-3/fulltext?fbclid=IwAR0Lh2pME97m5miVCC6Y79GvUoWolvFuQ2V5MzhAN4zk__vaHzE7O2y77L0#.X4S9VFkRLIY.facebook