外傷患者に感染症が合併したときに予後に与える影響は?

外傷の重症度によって異なる。特に軽症群でその影響が大きい。

 

外傷患者に合併症が生じると死亡率は上昇し、Failure to Rescue (FTR) : 合併症を起こした後の死亡”が診療の質に関連することを以前報告しました。
(Abe, T., Komori, A., et al. Crit Care 24, 223 (2020))

外科手術のQuality IndicatorであるFailure to Rescueは外傷診療の質の評価に使えるのか?合併症率は?

今回本研究では、合併症の中でも感染症にFocusし、外傷患者に感染症が合併したとき、どれくらい予後に影響するのかを調べました。

 

結果、外傷患者に感染症が合併したときの粗死亡率は約5倍になりました。また、外傷重症度を軽症、中等症、重症の3群に分けたとき、感染症の死亡への影響は、重症外傷群よりも軽症外傷群の方が大きいことを示しました。

 

 

軽症患者では重症患者に比べると医師の日々の診察やモニタリングが十分でないことがあります。また、外傷患者では外傷自体の炎症や臓器障害もあって、感染症の診断が難しいことも少なくありません。軽症外傷患者は本来、外傷で死なないはずの患者です。失うことのないように、早期発見と治療、何より合併症を起こさないように努めることが重要だと自身でも再認識した研究でした。

 

文責 小森大輝

 

 

 

 

 

原著論文

Komori, A., Iriyama, H., Kainoh, T., Aoki, M., Naito, T., & Abe, T. The impact of infection complications after trauma differs according to trauma severity. Sci Rep 11, 13803 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-93314-5
https://rdcu.be/cnKQ3