菌の毒性が強いと重症化するのか?

Beta‐hemolytic StreptococcusやStreptococcus pneumoniaeで敗血症となった場合、菌の毒性が高いと予後が悪い

 

 

慶應大+Dr Hifumi主導の共同研究

 

当たり前と思われるでしょうか?

私もこの領域にさほど詳しいわけではないのですが、菌の毒性が強いと予後が悪いと捉えるのは些か短絡的です。ウイルスでも強毒性がどうのこうの報道されていますが、感染症は基本的には宿主、臓器、菌によって症状が決まります。そのため、強毒性(high-virulence)だからと言って、予後が悪いとは限りません。

 

 

例えば、ICUの長期入院患者さんは最後は耐性菌と呼ばれる弱毒菌で死亡することを目にします。私は個人的にはその状態になったのが問題であって、菌ではないとよく言っています。感染症の先生には怒られるかもしれませんが。それくらいICUの全身管理は重要です。

 

外来でもfrailtyが高い人に、multimorbidityの人に感染した場合と健常人に感染した場合とでは予後が違うのは容易に想像出来ると思います。それに菌の種類、毒性が加わるわけですので、組み合わせは多数です。臓器障害もそれぞれですよね。今回はとりあえず、予後も悪いStreptococcus敗血症を評価したと言うところです。

 

たった62例のlimitationが多い研究です。調整変数も少ないですし、Coxでないと差が出ないくらいの差ですので、既往歴の詳細は?免疫は?背景因子は?とツッコミどころも多数ですが、今の非常に重要なトピックを捉え、今後のprecisoin medに繋がる研究だと思います。”振り子の法則”で細分化されてきている時期ではありますが。。。

 

 

 

意外に健常人に見えても免疫は個々によって違います。未知の菌やウイルスなら尚更、誰に、どんな既往の人に、どんな免疫の人にどんな反応が出るかが分からない。それが恐怖を生みます。

 

 

我々の職業は予測学、確率論で成り立っています。そのためにはベースとなる知識が必要です。

 

 

 

 

 

繰り返しますが、ウイルスも一概に毒性だけの問題では臨床は語れないと思います。

 

そう言えば、感度特異度、検査のTarget population論争が続いていますが、診断と防疫の違い、ゴールドスタンダートの設定の仕方、人の立っている位置によって必要なことが違います。自分の立ち位置から見える世界のみからの主義主張を行うのではなく、この辺も柔軟な姿勢と目的を持ちたいものです。

 

まあ、プロ野球でも、サッカーでも監督気分で試合は見ますからね。やむを得ませんが、ある程度見られたり批判されたりするプロのアスリートと違い、Covidの管理になると人の生活にかなり関わりますので、その辺も配慮も重要ですね。

 

 

免疫に異常がある時の症例なども近いうちに紹介したいと思います。

 

 

 

原著論文:Hifumi T, Fujishima S, Ubukata K, Hagiwara A, Abe T, et al. Clinical characteristics of patients with severe sepsis and septic shock in relation to bacterial virulence of beta-hemolytic Streptococcusand Streptococcus pneumoniae. Acute Med Surg. 2020;7(1):e513. Published 2020 May 31. doi:10.1002/ams2.513
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ams2.513