重症外傷は集約化した方が良いか?(日本におけるTrauma Centerが目指す目標は?)

日本外傷学会、救急医学会では例年日本におけるTrauma Center設立に向けたセッションが展開されている。Trauma Centerの名称とはアメリカに存在するLevel-1 Trauma Centerから来ており、重症外傷に特化した病院施設である。Level-1 Trauma Centerの要件に重症外傷(Injury Severity Scoreという外傷重症度スコアが16点以上)を年間240症例以上治療していることが要件とされている。本研究は日本において重症外傷を集約化し、単施設当たりの年間症例数増加が予後改善に繋がるか、そして単施設でどの程度の症例数が集約できているかを検証した。

 

結果、日本において重症外傷を集約できている施設は少なく、年間100症例以上集約できている施設は僅かであった(全体の14%)。また集約化により患者全体の予後は改善したものの、止血術を要した患者や予測生存率50%以下の所謂超重症外傷においては生存改善と関連していなかった。日本において重症外傷は減少している、それは交通安全の進歩を含めた社会基盤の安定化の良い影響である。一方で患者数が減少してきている今、数は力という言葉があるように、重症外傷を扱う施設がそれなりの重症外傷患者数を治療することは重要で、その為により積極的集約化を行う必要がある。また今回到達できなかった止血術を要した患者や予測生存率50%以下の患者予後改善の為には、JATECに基づく一般的な診療戦略の洗練化のみだけでは到達できず、更にAdvancedな外傷戦略が必要であることが示唆された。

 

Aoki, M., Abe, T., Saitoh, D. et al. Severe trauma patient volume was associated with decreased mortality. Eur J Trauma Emerg Surg (2020). https://doi.org/10.1007/s00068-020-01352-x

原著論文:https://rdcu.be/b4779

文責:青木誠