Frailty (フレイル)は、生理機能や認知機能の予備力の喪失を特徴とする多次元的な症候群で、病気に対しての脆弱性が増した状態のことです。
Frailは患者の予後を悪化させるとされていますが、今回は感染が疑われる患者にfocusしてFrailと予後との関連を調べました。
短期で死亡率にあまり差がない理由としては、急性期には感染症の影響がFrailの影響より強く死亡に関わっているのかもしれません。
Frailが長期予後悪化に関連しているという結果は海外の報告と一致します。今回統計学的な有意差を示せなかった理由の1つとして、日本の皆保険制度がFrail患者の死亡率改善に寄与しているのかもしれません。治療後のADLに関係なく、集中治療室に入室すれば低コストで誰もが治療を受けられます。
今後日本では高齢者がさらに増え、Frail患者も増えるでしょう。COVID-19でもResourceが問題になりましたが、ICUやそのスタッフにも限りがあります。
PICSとも関連しますが、Frail患者を増やさないように長期的の視点を持つことの重要性が増しているのは間違いありません。
文責 小森大輝
患者の既往歴ではない病前の状態をどう言語化(表現)するのかというのは未だに非常に難しいとされています。近年注目されているフレイルをClinical Fraility Scale(CFS)を使って表現し、予後との関連をみました。ADLより遥かに状態を表現できていると思いますし、Charlson Comorbidity Indexとはまた違ったものを見ている良いスケールだと思います。しかし、それでも状態全てを正しく表現できているかどうかは議論の分かれるところです。状態を正しく言語化することは今後も大きな課題になるでしょう。
CFSが正しく状態を表せていたとして、それが疾患の予後にどのように影響するのかを評価しました。細かい治療の方針にどのように影響するのかという点についても本当は見なければならないでしょうが。結果は示した通りです。
本研究のような研究の場合、勘違いされていることも多いのですが、結果のsignificanceはそれほど重要ではありません。臨床研究とは臨床疑問を持ち、可能な限り正しい方法で解析をし、正確に解釈し、報告するものです。つまり、研究疑問さえしっかりしていて、それに答えるデータがあれば、結果はそのまま伝えるだけで十分良い研究になります。有意差が出る出ないの観点から研究を行おうとする初学者が多い中、正確に解釈できた良い研究になったと思います。
本研究に限界もありますが、この分野の限界でもあります。本論文がほんの少しでも科学を外に押し拡げる一助になっていれば幸いです。
阿部
原著論文:Komori, A., Abe, T., Yamakawa, K. et al. Characteristics and outcomes of frail patients with suspected infection in intensive care units: a descriptive analysis from a multicenter cohort study. BMC Geriatr 20, 485 (2020). https://doi.org/10.1186/s12877-020-01893-1