ヒト組織ヴァイローム(ウイルス叢)

SARS-CoV-2で世の中の話題の中心になっているウイルス。

臨床家として辛うじて戦えるのはインフルエンザ。ただ、これは抗ウイルス薬が効いているというよりはsupportive therapyでどうにかなると言うことであり、風邪ウイルス(ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなど)と何ら変わりはない。EBVも一緒。熱が下がるまで安静。

インフルエンザで命を持っていかれるのはインフルエンザ合併肺炎、インフルエンザ後肺炎と言う細菌性肺炎であり、ウイルス性肺炎であることの方が稀だと考えてきた。ただ、Covid-19を経験すると、これまでいかなる抗生剤を用いてもよく分からない肺炎にはもしかしたら、風邪ウイルスみたいなのが原因のものもあったのかもしれないと思ったりする。重症で長期になって、CMV肺炎に対峙する時はデノシンが出てくるけど、薬が効くって言うよりはどこまで体を立ち上げられるかにかかっている。

耐性菌、耐性菌って騒がれるけど、弱毒な耐性菌にやられるのはそれが生えるような状態の方が問題である。でも、耐性菌が生えるとき、体の中のウイルス叢は感染へと向かわないのだろうか?CMV以外に調べることはほとんどない。

インフルエンザ脳炎は良い予後であることは少ない。風邪って診断されて戻ってくる心筋炎は2回目の受診で診断した場合はチャンスがあるが、3回目だと厳しい時もある印象。心筋炎はECMO (VAだけど)までの速度が重要だから。一方で軽症で終わる人も多い。ウイルスの種類によるのだろうけど、パネルでざっと精査してもほとんどの場合、何のウイルスが原因だったかはほとんど分からない。

特異的治療があるという意味においては、HBV、HCV、HIVは戦えるのかもしれないが、キャリアとなって、life long diseaseだ。狂犬病はほぼ100%死ぬ。HSVは脳炎でなければ、HZVと同じくたまに出てくるだけだが、それなりに苦痛を来す。

 

何が言いたいのかと言うと我々はウイルスについて無知で、臨床家はまだそれほど戦える術を持っていない。Ventilator、ECMO、RRTのようなHalfway Techonology、ステロイドなどのAdjunctive Therapyを使って、体が立ち上がるのを、スーとウイルスがいなくなるのをじっと我慢して待つ。

 

悪者かと思いきや、実は体の中に住んでるってよ。HSVやHZVだけでなく、もっとたくさん、いろんなところに。やっぱり知らないことばかり。

 

ヒト組織ヴァイローム(ウイルス叢)の網羅的描出
-健常人の体内における”隠れた”ウイルス感染の様相-

https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00008.html

 

Kumata, R., Ito, J., Takahashi, K. et al. A tissue level atlas of the healthy human virome.BMC Biol 18, 55 (2020). https://doi.org/10.1186/s12915-020-00785-5

https://rdcu.be/b42ve

 

 

 

この先、臨床的に困るのはウイルスと真菌だと思って、国際学会では常にアンテナを張って来たけど、やっぱり難しい。Covid-19は我々のプラクティスそのものを変えようとしている。社会まで巻き込んで。