本研究は、ヘルスサービスリサーチ研究で、ドナベディアンの3要素のうち、structureに注目して、outcome評価を行った研究です。
敗血症は、ICUに入室する患者の主要な疾患の1つです。敗血症の治療成績は以前に比べると改善していますが、現状、ICUや病院死亡の主要な死因です。今後画期的な治療が開発されて敗血症治療成績が劇的に改善する可能性はおそらくなく、現在あるものをうまく使って少しでも治療成績を上げるしかないと思います。
そこで、現在あるものの中で今回はICUのstructureのうち、ICU model(closed ICU or open ICU)に注目して研究を行いました。
結果としては、病院死亡に対してclosed ICUとopen ICUで統計学的有意差はありませんでしたが、多変量ロジスティック回帰分析やプロペンシティースコアマッチングの結果ではclosed ICUの方が病院死亡が低い傾向にありました。
closed ICU管理をするには、マンパワーが必要で、日本には十分な集中治療医がいないのが現状であり、open ICUにおいても集中治療医を有効活用することは大切なことだと考えられます。
永田
メンターコメント
Closed ICUとOpen ICUの議論は尽きません。問題点として、Closed ICUとOpen ICUの定義がはっきりと定まっていないことがあります。Closed ICUとOpen ICUは国ごと、地域ごと、病院ごとにそれぞれ運用の仕方が異なります。集中治療医の少なさによるリソースの分配に限界があるからです。更にこの議論を深めていくためにはClosed ICUとOpen ICUを形作る因子をより掘り下げていく必要がありそうです。
阿部
原著論文：
Nagata I, Abe T, Ogura H, Kushimoto S, Fujishima S, Gando S; JAAM FORECAST group. Intensive care unit model and in-hospital mortality among patients with severe sepsis and septic shock: A secondary analysis of a multicenter prospective observational study. Medicine (Baltimore). 2021 May 28;100(21):e26132. doi: 10.1097/MD.0000000000026132. PMID: 34032762.
https://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2021/05280/Intensive_care_unit_model_and_in_hospital.72.aspx