共にICUではそれほど意味を持たない。
二つとも定義を満たさないのであれば、ICUに入れる必要はないかもしれない。
大半の敗血症はsepsis-2でもsepsis-3でも捕らえられる。しかし、どちらかでしか捕らえられないなら注意が必要。分かりにくい感染症ということだろう。
敗血症とは感染に対する免疫応答不全による臓器障害症候群だとされている。
しかし、sepsis-2でもsepsis-3でも研究では敗血症そのものをアウトカムとして捉えているわけではなく、感染により死亡率の高い群をsepsisとしてアウトカム設定してきた。そのことが敗血症研究とその結果の解釈に混乱を生んでいると考え、二つの定義の患者群の違いを見ることにより本質に迫ろうと思った。
Sepsis-2の定義は過去の学会前のミーティングで有識者5人程度が集まって決めたエキスパートオピニオンが元となっている。もちろん、病態生理を考えての定義なので、それなりに納得はできる。
qSOFAやsepsis-3はビックデータから後ろ向き研究で作られたものだ。それ自体はrobustなものだが、qSOFAなど実用性を疑問視する人たちもいて、いまいち評判が悪い。
そもそも、sepsis-3に用いられるSOFAやAPACHE2などの重症度スコアは研究の重症度調整や医療の質の評価に使われて真価を発揮するものだと思う。リスク評価には使いにくいことが分かっている。我々はSOFAの高い低いに関わらず、バイタルサインが乱れたものにはresuscitationを行い、感染には抗生剤を投与する。つまり、SOFAが高いから医師の行動パターンが変わったりする事はない。
もっと言えば、スクリーニングに使う風に発表されたqSOFAだってそんなものだと思う。本研究でも6割程度にしか敗血症を診断するのに使われていなかった。余程の素人がとらえるのには良いのだろうが、救急現場の医療者は普通に全てのバイタルサインを組み合わせて評価して、その他の因子も判断材料に使って入院させ治療している。
本研究のように感染症疑いでICUに入院した場合、その死亡率は20%に及ぶ。つまり、それらがsepsis-2を満たしても、sepsis-3を満たしても、ICUに入れるって判断した時点で最重症とリスク評価しており、そこから先はあまり意味をなしていない。しかし、sepsis-2もsepsis-3も認めないのであれば、死亡率はゼロだったので、それはICUじゃなくても良かったかもしれない。sepsis-4なんてまた出来たりして。。。
呼吸数が大事、大事っていう人がまあまあいるけど、研究者としてその変数を扱ってみるとその難しさが分かる。欠損は多く、感度も特異度もそれほど高いわけではない。実臨床において呼吸数だけで何か決める事はない。重症だと思って入院させたら、やっぱり呼吸数が早かったとか、呼吸抑制がかかっていたとか、それで判断したというよりは後から思い返す方が私は多い。
リスク評価をするときにはできる限り簡便にとれて、評価し易い変数が多めにあった方が良い。呼吸数が大事というよりは呼吸数も大事にするような注意深い観察が重要なんだろう。
Sepsis-2とかsepsis-3などの本当の意義は”背景や感染源に関わらず、同じような病態をとって悪化する症候群があるよ。”っていう定義づけをしてその辺の患者群をデータとしてまとめて集めたことだと思う。そのことにより病態の解明が進み、ある程度のアプローチの仕方が多くの人に伝わり易いようにガイドラインやバンドルを使って周知された。どこでも起こり易い疾患群だけにそれは良かったと思う。
でも、その“One size fits all approach”に限界がきている。
敗血症のPhenotypeやEnd-typeを見つけにいくことが今後の発展につながると思う。
振り子の法則ではあるけども。
我々も臓器別によるPhenotypeを見つけにいったが、、、、そう簡単ではなかった。
Abe, T., Ogura, H., Kushimoto, S. et al. Variations in infection sites and mortality rates among patients in intensive care units with severe sepsis and septic shock in Japan. j intensive care 7, 28 (2019). https://rdcu.be/b5nMT
今後は病態を細かく分けて、PhenotypeよりもEnd-typeを見つけていかなければならないのかもしれない。この辺をimplicationに熱く書きすぎて、長いってReviewersに減らすよう指示された(Generallyからのparagraphね)ので、ここで語っておく。
敗血症の研究はまだまだ続く。。。
Abe, T., Yamakawa, K., Ogura, H. et al. Epidemiology of sepsis and septic shock in intensive care units between sepsis-2 and sepsis-3 populations: sepsis prognostication in intensive care unit and emergency room (SPICE-ICU). j intensive care 8, 44 (2020). https://doi.org/10.1186/s40560-020-00465-0