循環動態不安定な腹部単独実質臓器損傷-脾損傷or肝損傷にTAEは禁忌か?

ショックでもCTを取れるチャンスがあるなら、TAEも治療の選択肢になる

 

外傷やっている人なら多くの方はご存じと思われますが、腹部の実質臓器損傷-特に脾損傷や肝損傷は循環動態不安定だと原則手術、個々のガイドラインなどにもよりますがAEはcontraindication-禁忌とまで言われております。ですが私含めて循環不安定でもTAEを完遂したことのある方いらっしゃるのではないでしょうか?

本研究では外来受診時血圧90mmHg未満で24時間以内に輸血を要した症例を循環不安定と定義してTAE vs Laparotomyで予後を比較しました。結果、循環不安定といえどTAEでもいける可能性あるんじゃないの?ということを呈示しております。絶対的に救命するための手術-Laparotomyは重要ですが、仮にTAEでも同等の治療成績-生存が得られるのであればTAEによる恩恵ってあると思うんです。医学的に言えば臓器温存、安静期間の短縮、医療費削減、個々の患者を思えば「開腹の傷が無くて済む」、なんてのも重要なアウトカムなのかと私は思います。

 

文責:青木

 

 

 

メンターコメント

より低侵襲の治療が模索されていくのは医学の領域では当たり前のことでしょう。一方でそのことによって失われる命が増えてはなりません。現実社会では時に専門家はガイドラインや教科書よりも少しアドバンスな選択を取ることがあります。その結果をまずは後ろ向きに解析し、結果を示し続けることによって、次のガイドラインや次の研究に結びついていくのだろうと思います。

 

阿部

 

 

原著論文

Makoto Aoki, Toshikazu Abe, Shuichi Hagiwara, Daizoh Saitoh, Kiyohiro Oshima,
Embolization versus Surgery for Stabilized Patients with Solid Organ Injury,
Journal of Vascular and Interventional Radiology, 2021
https://authors.elsevier.com/c/1dG4-_NvU8LlRT